板門店ツアー


 旅の3日目はいよいよ板門店ツアー.そう,あの板門店に行くツアーです.板門店というのは(知っている人がほとんどやと思うけど)南北朝鮮の分断の象徴ともいえる場所で,さまざまな南北の交渉の場がこの板門店で行われています.実際まだ朝鮮戦争は終わっていません.停戦状態にあるだけです.そして,その停戦の軍事境界線がちょうど板門店を通るわけで,そのラインの南北それぞれ2キロが非武装地帯になっていて南側は国連軍が統治しています.北側は北朝鮮軍と中国義勇軍.
 板門店に行くには政府公認のツアーに申し込むことが必要で,僕は大韓旅行社のツアーに申し込みました.事前に日本から国際電話で予約したのですが,まあ態度が悪いのなんのって.まあそれでもなんとか予約して,当日を迎えました.服装はGパン,ミリタリーはNG.集合は朝の8時20分にホテルロッテの大韓旅行社前.出発は8時50分です.

 さて,ホテルロッテから大韓旅行社のぼろいバスに乗って出発です.板門店まではおよそ1時間ちょっと.その間ガイドのおばさんの説明を聞いていました.ツアーに参加していたのはおそらくすべて日本人だったので,解説ももちろん日本語でした.韓国の人が普通に日本語を話すことの意味を考えながら聞いていると,そのおばさんも親兄弟はすべて北に住んでいて戦後50年ずっと離れ離れだそうです.やっぱり朝鮮半島は近いようで遠いところです.日本とはまったく事情が違う.
 そんなこんなで,統一大橋に差し掛かり,そこで全員がパスポートのチェックを受け,いよいよ国連管轄下の軍事キャンプに入ってきました.ここからは決められた場所以外の撮影は一切禁止です.バスも国連のバスに乗り換えます.緊張も一気に高まってきました.バスには国連軍のMPが同乗し,常に警備をしています.
 やがて,国連キャンプのビジターセンターに到着し,そこで板門店に関するブリーフィングを受けました.あと,板門店でいかなることがおこっても文句は言わないという旨の宣誓書にサインをしていよいよ出発です.
 国連軍のジープに先導されとうとう軍事境界線近くの非武装地帯に入ってきました.国連施設の展望台に上がり,写真撮影が許可されたので写真をとりました.一番上の写真は北朝鮮の宣伝村の様子です.見えにくいですが,遠くで高々とはためいているのは北朝鮮の国旗です.あれは世界で最も高い国旗掲揚台だそうです.停戦合意のとき,南北の非武装地帯に民間人を入植させるという合意があったのですが北側はそれを守らず誰もすまない家だけが建てられているのです(だから宣伝村).

 それから次の写真はいわゆる板門店を上から見たところ.水色に塗られている建物は国連側の施設という意味です.右から2番目の建物で南北会談が行われます.立っているのは国連軍の韓国人兵士.壁から半分だけ身を出して北側の兵士と対峙しています.銃弾が飛んできてもすぐによけれるようにするためだとか.

 お次の写真は会談が行われる建物の中です.中央に立っている旗が国連の旗.あの旗より右側が北朝鮮です.左が韓国側.つまりあの旗が軍事境界線なのです.国連の施設内だから北側の領土にも入っていけるのですが,外はもちろん北朝鮮の兵士が目を光らせています.中央に写っている兵士は足を開き,こぶしを握り締めていつでも攻撃に入れる体勢をとっています.まあ,僕のほうがでかかったけどね.でもすんごい緊迫感です.
 さて,上の写真はおんなじ建物の中ですがあの兵士の後ろの扉の向こうは北朝鮮です.あの扉を走り抜ければ亡命です.国連側の最後の砦なんです.あの兵士はいったいどんなことを考えながら警備をしているのでしょうか.

 そして,右の写真はなんでしょう.さっき言ったように,国連側の施設は水色に塗られています.右の写真の建物はコンクリの色そのままですね.そう,北朝鮮側の建物です.
 さっきの写真の扉を抜けて行き着くのはこの建物です.一度入れば二度と南側に戻ってくることはできません.非常に小さいですが,建物の1回入り口部分に,北側の兵士が立っています.もちろんほかにも警備の兵士がたくさんいて,こちら側を細かく観察していました.
 とにかく向こうを挑発する行為は止めてくれと,何度も注意されていましたが,それもそのはずです.まさしく一触即発の感じでした.北朝鮮側にも板門店ツアーがあって(もちろん参加者は共産圏の人のみ),その場合はあの建物からこちら側を眺めるのでしょう.北側のツアーとはちあわせないように,時間もずらしているらしいです.

 そんなこんなで,ほかにもいろいろ回りましたが,すべてバスの中から見るだけでした.あまりにも危険な地域でバスから降りられないからだそうです.
 朝鮮動乱から50年経った現在もこのような現実があるということに,少なからずショックを受けました.最近は南北の雪解けムードも言われているようですが,ここにはそんな空気は一切ありませんでした.朝鮮半島の人々は常にこの現実と戦っているのですね.今も徴兵制のあるこの国の本当の姿を突きつけられたような気がしました.ましてや同じ民族同士やもんねぇ.

 百聞は一見にしかずです.皆さんもぜひ機会があればいってみてください.ちなみに,昼食は国連キャンプ内で兵士たちと同じバイキング形式の食事があるのですが,味は保証できません.まずい!あのグレービーソースはいけてなかったなあ.
 今度,僕がもう1度いく機会があれば,その時は板門店が朝鮮半島統一の平和の象徴となっていることを願って・・・

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