日高・襟裳岬編


 1999年8月5日.どんよりと曇った大阪.バックパックと寝袋を抱えた21歳(当時)の僕は大阪空港にいた.目的地は北の大地北海道.僕にとっては2回目の北海道旅行.まだ22歳未満であった当時,スカイマークエアライン社のスカイメーとなる特典を使い,1万数千円ほどで新千歳空港までのチケットを手に入れていた.
 飛行機の大好きな僕はすでに少々興奮気味.どきどきして飛行機に乗り込む.そしてテイクオフ.スラストリバーサの豪快な音に興奮は頂点に・・・と思いきや,すぐに爆睡.途中まったく起きることなく北海道新千歳空港に到着.

 千歳の天候は曇り.どんよりとしていた.こころもち涼しいか.空港でいっしょに乗ってきた友達と別れ単独行動をとることにした.彼の最初の目的地は襟裳岬.今回は東西南北の岬を制覇してやろうと思っていたので,まずは南へ向かうことにした.新千歳から苫小牧で途中下車.街をぶらつき始める.

 そんな僕の目に飛び込んできたのが,この銅像.なんだこりゃ?よくよく見ると,この少年はスケート靴を履いており,どうやらスピードスケートをやっているみたい.他にもこのような銅像がいくつか設置されていた.さすがに北海道ということで,こういうもんがあるんだなぁと妙に納得.
 そのまま,苫小牧でラーメンを食べ(味は普通)休憩してから(要は電車待ち)もう1度駅に戻った.

 苫小牧から様似行きの電車に乗る.もちろんディーゼル.電車は定刻どおり発車してのどかな牧草地帯を走り抜けていく.そう,ここは日高地方.日本でも有数のサラブレッド生産地帯だ.前回の旅では車で社台スタリオンなどを訪れたが今回は電車.ラーメン食べたばっかりなのに駅弁をほおばりながら贅沢な時間は流れていく.
 そして,事件は起こった.静内の駅に到着した電車.日高本線では一番の都会であろうと思われる.時刻表を見ても数分この駅に停車するみたいだ.
 ・・・が,いつまでたっても発車しない.うん?そこへ車内アナウンス.
 「えー,ただいま車両故障により運転することができません・・・」
なに?突然の車両故障.動かなくなったのだ.もうすぐ代わりの車両で運転を再開するという.そして,待つこと小一時間.ようやく代わりの車両がやってきてそれに乗り込んだ.やれやれ.予定より大幅に遅れての運転.

 まあ,暇な旅行やしええ経験か.ってちがうやないかーい!わしは,今日様似の駅からバスに乗って襟裳岬まで行かんとあかんのじゃー!ひょっとしてその最終のバスに乗り遅れそう?無駄に駅で一泊?なんてことを考えているうちに,ようやく終着駅の様似に到着.バスの発車時刻の1分前.やばい!
 駅を飛ぶようにすり抜けてバスターミナルへ全力疾走.その距離およそ20メートル.うわぉ.ちかっ.おまけにバス来てないし.さすがど田舎.こじんまりとしてるし,時間にもややルーズ.助かった.

 バスに乗り込んで,えりもへ向かう.実はバスに乗るにもひともんちゃく.僕はJR北海道線,JRバスが乗り放題になるチケットを持っていたのだがバスの運ちゃんがその切符の存在を知らない.キレかけで強引に説明したので,何とか乗ることができた.バスに乗ってからがまた長い.地図を持っている人は見てもらうといいが,様似から襟裳までは結構な距離があるのだ.昼に苫小牧を出て,今はもう夜の8時を過ぎている.外は真っ暗.バスの乗客も僕を除けばばあちゃん一人.襟裳のほんの小さな繁華街にバスは通りかかる.ここで,ばあちゃんは降りるみたい.で,僕に話し掛けてきた.
 「あんた,どこへいくの?」
 「襟裳岬ですけど.」
 「そんな,もう夜でなんも見えんし,この先バス乗ってても人なんかすんどらんよ.」
 「・・・」
 「この先にYHがあるからそこに泊まりんしゃい.」
そこへバスの運ちゃんも参加.
 「そうや.それがいい.明日の朝見たらいいじゃない.」
 「はぁ,そうですかね.」
すんなり流されて僕は降りることに.外は真っ暗.明かりもない.人の気配がしない.えらい田舎に来てもうた.森進一の歌を思い出す.♪襟裳のー春はー何も,ない,春ですー♪いやいや,夏も何にもないでぇ.

 ということで,その日は襟裳のYHに泊まり夕食はカップラーメン(すでに夕食の時間は終わってた).次の朝に備える.明日の朝一で出発.そうでないと,苫小牧に出るのに6・7時間かかるため無駄に1日が終わってしまうのだ.

 そして翌朝.いち早くYHを出て,バックパックを背負い誰もいない海岸沿いの道を歩く.うわさどおり風が強い.やっとの思いで襟裳岬にたどり着く.さぞ眺めは素晴らしいんやろなぁ.
 ・・・ってまたまたわぉ!!霧?まったくなんも見えへんやーん!引田天候(天候だけに)もびっくりな見事なイリュージョンっぷりで僕はまったく襟裳の海を拝むことはできなかったのでした.

結論.襟裳には何にもないといううわさは本当.でも,いいとこよ.・・・どないや.

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