ポートランドより vol.04


 今回は前にも予告したように,ポートランドの交通システムについて少し触れておきたいと思います.ポートランドはオレゴン州にある,人口40万人ほどの都市です.オレゴン州最大の都市ですが,州都はせーラムという都市です.

 この町は大変特徴的な交通システムを取っています.まず,パーク&ライド方式.これは最近,奈良の町でもとり入れる動きがあるようですが,これはどういうことかというと,文字通り,車をパークして,バス,鉄道にライドするということ.ダウンタウン中心部の交通渋滞を避けるため,郊外に無料の駐車場を多数設け,そこに車をとめ,人は電車なり,バスに乗るなりして都心部へ向かいます.これによって,都心部への車の流入を抑制することができるのです.したがって,ポートランドの町は,非常に車が少ないし,道路もそんなに広くない(どちらかというとかなり狭い)ので,歩行者は安心して街中を歩くことができます.また,車が少ないので,空気も大変きれいでした.日本の都心部とは雲泥の差があります.

 次に挙げられる特徴が,ダウンタウンの中心部は,バスも鉄道もすべて無料になるということ.すなわち,ダウンタウンの中心部は無料ゾーンになっているのです.ポートランドでは,路線バスをTRI-Met,路面電車(郊外に行くと普通の電車になる)をMAXと呼んでいます.よって,無料ゾーン内では,TRI-MetもMAXも乗り降り自由,乗り継ぎ自由です.これによって,わざわざ車でダウンタウンに行かなくても,きちんと足が確保されるのです.

 3番目にくるのが,ゾーン制の採用.ポートランドの町はいくつかのゾーンに分かれています.例えば,ダウンタウンの中心部が1ゾーン.僕の住んでいるところは2ゾーンです.バスや鉄道の料金は,すべてこのゾーンによって決まります.僕の例で言えば,2ゾーンから1ゾーンに向かっていくとき,つまり,2つのゾーンにまたがっていくときは,2ゾーン分の料金$1.15(2000年1月現在)が必要です.でも,よく考えてみてください,バスに40分乗って,日本円で100円そこらで行けるのです.これはかなりの安さです.その上,乗車時にチケットがもらえ,3時間以内であれば,そのチケットを見せることによって,何回でも乗り降り自由にできるのです.ほんと日本では考えられないような,質の高いサービスです.ポートランドは全米でも住みよい都市として,モデル都市になっているみたいです.

 ゾーン制に関係して,ポートランドの町は,ゾーンごとに愛称がついています.僕の住むゾーンは"rain drops",他には,"beaver", "rose", "salmon", "oak", "deer", "snow"です.いずれも,ポートランドにゆかりのあるものがつけられています.このことさえ頭に入れておけば,ダウンタウンのバス停でも,迷うことはありません.すべてのバスはゾーンごとに分けられたバス停に停まるので,とても分かりやすいです.

 ポートランドの交通に関して,最も驚かされたのが,車椅子の人に対する対応.バスを例に取れば,車椅子の人がいると,ドアのところからステップが出てきて,それに車椅子をのせ,そのまま持ち上げて車内にいれることができます.また,前の座席は優先座席になっていて,お年寄りはもちろん,車椅子の人に対しては,そのイスが跳ね上がって,車椅子が止まれるスペースができます.同様にMAXも車椅子に対応しています.街に目をやると,交差点にある歩道はすべて段差がなくなっていて,スロープ状になっています.

 というわけで,すべての人がとっても自然に暮らすことができます.この公共サービスの質の高さ,物価の安さだけをとっても,ポートランドは非常に暮らしやすい町です.少なくとも日本では考えられないことです.本当はこれが当たり前にならないといけないのですが,まだまだ日本は出遅れていることは明白です.これからの高齢化社会,避けては通れない問題です.

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